礫群(れきぐん)
旧石器時代の遺跡から発見される当時の人々の生活の痕跡の中で、一般的に火の使用例として真っ先に考えられているのは、「礫群(れきぐん)」と呼ばれるものです。拳大(こぶしだい)の焼けた礫(れき)が、1~3m程の範囲内からまとまって出土した状態を指します。
下の写真は、その「礫群(れきぐん)」の一例です。礫の表面が赤や黒く変色したり、一部、細かなヒビが入っているものもあります。これらは、いずれも礫の表面が火を受けたことにより変化した結果と考えられています。礫群の用途を明確に示すような出土事例は残念ながらまだ発見されていませんが、現在の民族例などから考えると、主に調理に使用されていたものではないかと考えられています。
炉址(ろし)
旧石器時代の人々の火の使用例としてもう一つ重要な事例があります。それは「炉」です。「炉」は、下の写真は「炉」の検出例です。この「炉」は、単に地面に火を使った痕跡があるのではなく、幼児の頭くらいの大きさの川原石をコの字状に並べた「石囲い炉」というものです。大きさは、1.0m×0.7m程度です。
コの字状に並べられた川原石はもちろん、内部の土も焼けて硬くなり、奥の方では赤黒く変色していました。また、内部や周辺からは炭化物や、焼けた礫(れき)の破片が出土しています。礫にはものが燃えたときに生じたススやタールの痕跡(こんせき)も認められます。調理や暖を取ることを目的に利用されたのでしょう。
炭化物集中
礫群(れきぐん)・炉址(ろし)と共に、旧石器時代の人々の火の使用を考える上でもう1つ重要な痕跡が遺跡から発見されることがあります。それは、僅か数ミリ程度の細かな炭化物が集中した場所です。このような場所を炭化物集中と呼んでいます。
ここで言う炭化物とは、木材の焼けた滓(かす)です。1点1点は極めて小さな粒ですが、これが集中しているということは、当時の人々がその場所で火を使用した可能性が高かったものと考えられます。下の図は、黒い点が密集している部分は石器の製作(せいさく)址(し)、赤い点は炭化物の分布を示します。石器が製作された場所のすぐ近くで人々が火を使用していたことがよく分かります。