金属器
この資料は、足柄上郡中井町比奈窪にあった比奈窪中屋敷横穴墓群15号墓から出土した「円頭大刀(たち)」です。大刀(鉄刀)は、弥生時代末に出現した片刃の鉄製武器で、古墳時代を通じて日本列島に普及しました。古墳時代後期(6世紀)以降には、金・銀・銅で装飾され様々なデザインをした「装飾付大刀(たち)」が隆盛しますが、このうち円頭大刀は把頭(つかがしら)に丸みのある金具を取り付けたものです。15号墓の円頭大刀は、8つの透かしを持つ「八窓鍔(はっそうつば)」も伴っていました。
比奈窪中屋敷横穴墓群出土 円頭太刀
比奈窪中屋敷横穴墓群では、この他にも複数の鉄刀や鉄鏃(てつぞく)・弓金具など多くの金属製品が出土しましたが、円頭大刀が神奈川県内の横穴墓から出土した例は少なく、またこれほど良好な状態を保っていたのは初めてで、貴重な資料と言えるでしょう。