祭祀具
茅ヶ崎市 小出川河川改修事業関連遺跡群 ―H1号河道址出土 人面墨書土器 木製品―
H1号河道址は人工的に河道を屈曲させてあり、底面には礫が敷かれていました。護岸施設は確認されていませんが、「津」などの港湾施設として作られたものと思われます。そしてこの河道址からは墨書土器や木製模造品などの祭祀遺物が多く出土しました。このような祭祀遺物が出土する地点は、河道の中でも下寺尾廃寺周辺から確認されており、郡衙や古代寺院に関連した祭祀場であったことがわかりました。
H1号河道址
人面墨書土器は、土器の表面に神や人の顔を墨で描いたものです。穢れを払うための祭祀に使われました。左の土器には顎に髭のようなものが見られ、比較的写実的に描かれています。右の土器には抽象的な画風で一つ目小僧に手足が生えているような図が描かれています。
人面墨書土器
木製模造品では絵馬や刀型木製品、斎串、弓型、人形、櫛等が出土しています。人形は人の形代であり、人間の肉体的、精神的苦痛の解消や欲望達成の手段として扱われ、祓いや呪詛の道具として用いられたものです。絵馬は下半分が欠けていますが、墨で描かれた顔や耳、鬣の部分が残っています。馬は水神との結びつきが強いものとして捉えられており、水辺の祭祀が行われていたことがわかります。
木製模造品 人形と絵馬
装身具
伊勢原市 西冨岡・向畑遺跡 ―H64号竪穴住居跡出土 銅製帯金具―
帯金具とは律令官人の制服の革帯に飾る金具です。官人の位によって種類・材質・色が決められていました。金属製のものと石製のものがあります。県内で出土しているものは大半が単独での出土ですが、西冨岡・向畑遺跡では銅製のものが10点纏まって竪穴住居跡の北側の壁に近い床面から出土しており、貴重な発見となりました。方形の巡方が4点と半円形の丸鞆が6点あります。ベルトのバックルの部分にあたる鉸具と端にあたる鉈尾はありませんでしたが、帯金具の一つのセットとなり得るものです。8世紀後葉の竪穴住居跡から出土したことによって、律令制が地方へも浸透していたことがわかりました。
帯金具の出土状況と配列例