道具
現在では一般家庭で使用することは少なくなりましたが、江戸時代には豆、胡麻、芋類、すり身、味噌などを加工、貯蔵する調理具としてよく使用されていました。江戸時代の始めには瀬戸・美濃で生産されたやや軟質で摺目の粗いものが主体を占めていましたが、18世紀初め頃から硬くて摺目が緻密で磨耗しにくい堺産が出回るようになると、瀬戸・美濃産の流通量は次第に減っていきました。
擂鉢
包丁やハサミ、鎌などの刃物を研ぐために使用される砥石は、用途に応じて目の荒いほうから荒砥、中砥、仕上げ砥に分類されます。石材は砂岩、凝灰岩、粘板岩などがあります。形は直方体を基本としますが、遺跡から出土する砥石はよく使い込まれているものが多くほとんど原形をとどめていません。
砥石
たばこが日本へ伝播した時期は16世紀末頃と考えられており、江戸時代になると喫煙の風習は大流行しました。現在は紙巻きたばこが主流ですが、江戸時代には煙管を使用していました。煙管はたばこの葉を詰める側の雁首、たばこを吸う側の吸口、雁首と吸口を結ぶラウから構成されています。火皿や吸口の素材は真鍮や銅が多く認められますが、金や銀製の高価なものもありました。
煙管
火打金は江戸時代の発火具です。火打石と呼ばれる硬い石に火打金を打ちつけることによって発生する火花を火口(ほくち)にとって火種をつくり、そこに付け木などの燃えやすいものにつけて炎にしました。火打金の素材は鋼鉄で、先端部分(打撃部分)が最も厚く作られています。写真は山形を呈していますが、江戸では長方形を呈し持ち手部分の両端を鎹(かすがい)のようにとがらせて板に打ち付けたカスガイ形と呼ばれるものが使用されることが多かったようです。
火打金
装身具
櫛は髪を解いたり梳(す)いたりする道具ですが、挿し櫛(さしぐし)として髪を飾ったり、髪の汚れやほこりなどを取り除く際にも使用されました。この櫛は鬢搔き櫛(びんかきくし)と呼ばれる髪を結うために使用された櫛です。左右不対照なのが特徴で、長さ約11cm、歯の数は50本を数えます。
櫛
簪(かんざし)は髪に挿す飾りです。この簪は玉簪と呼ばれる簪で、頭部先端に耳かきが付き、足(髪にさす部分)が二股になっています。本体部分は真鍮で作られており、頭部に紅色の飾り玉が付けられています。簪は江戸時代後期に大流行し、材質も種類も様々なものがありました。
簪(かんざし)
鬢付油(びんつけあぶら)を入れる容器で長楕円形を呈しています。鬢付油は髪を張らせたり、髪を固めて乱れを防いだりするのに用いられた固練りの油です。この鬢水入れは18世紀前半に瀬戸・美濃で作られたものです。陶器製で外面には型紙摺りによる文様が施されており、大きさは長径12.4cm、深さ4cmを測ります。このようなタイプの鬢水入れは19世紀になると少なくなります。
鬢水入れ
化粧用の紅を入れる小型の容器です。紅が広く普及したのは江戸時代後期になってからです。写真は19世紀代に肥前で作られた白磁の紅皿で、外面には唐草文様が施されています。大きさは直径6㎝強、高さ約2cmを測ります。紅を入れる容器は、このような紅皿のほかにも紅猪口(べにちょく)と呼ばれる小振りの磁器坏や碗がありました。
紅皿