矢頭遺跡は、大磯丘陵西端の標高140m付近の尾根部に位置します。縄文前期後半の集落で、竪穴住居3基、集石、土坑などが発見されています。眼下には酒匂川によって形成された足柄平野をはじめ、箱根外輪山や富士山など、各方面が望める眺望の良い立地です。
集落の構造を見ると、丘陵尾根の平坦部を中心に住居がつくられ、その周囲に調理施設と考えられる集石とお墓と考えられる土坑が広がっています。平野、台地、丘陵部と地形の起伏が多い地勢を利用して、多様な自然の恵に囲まれた環境であったと考えられます。
足柄上郡大井町 矢頭(やがしら)遺跡
足柄上郡大井町 矢頭(やがしら)遺跡
矢頭遺跡では、土器の特徴を見ると、東関東や東海、中部地方など外来系の土器を多く伴うことも本遺跡の特徴で、他地域との関係を調べる上でも重要な遺跡です。東関東系の土器は、貝殻による文様、東海地方の土器は、薄手のつくりであること、中部地方の土器には、粘土の質感や混和材などに特徴が見られ、搬入された土器から、各地域の文化が交差した十字路であったといえます。
縄文時代前期後半土器の把手には、イノシシの顔を模したものが見られます。特徴的な鼻が克明に表現されているものから、抽象的にコブのように粘土の塊が付けられるものなど、各種が出土しています。